2014年5月20日火曜日

丘に溢れる薫風の輝き。

大変お待たせしてしまいましたが、5月の美瑛の丘の様子をご報告いたします。気がつけば4月初旬に丘紀行を記して、1か月半が過ぎ去ってしまいました。その間ご想像に難くないわけではありますが、例年通り丘は激変。まだたっぷり積もっていた雪がなくなり、来る日も来る日も農家さんの途切れない耕運が続き、秋まきの小麦ばかりではなくて、アスパラが芽を出し、ビートの苗が植えられ、春から初夏へと移る美瑛の丘=農家の作業場は、見るものを虜にせずにはおきません。

それにしても、丘に起伏があることで、耕運作業は何倍にも難易度が増し、水撒きの必要性・頻度共に増え(たぶん丘の上部と下部では水撒きの量的な差もあるのかもしれません)、そして一景観を愛でる身からすると、何十倍にも美しさは高まったように感じてしまいます。
以前にも紹介したことがあるかもしれませんが、実は町内会の活動の延長線でこの起伏ある丘で、耕運機を運転したことがあります。何がどうだと頭の中では理屈を積み上げてみるのですが、どうやったって耕運機はまっすぐに動いてくれません。ですので、丘を彩る縞模様はランダムとなり、美瑛の丘を特徴づけているあの端正で几帳面な平行線は、いつまでやっても描けませんでした。クルマに始まってリフトとかあれやこれやの運転好きではありますが、丘の斜面をずり落ちる耕運機を無理に戻すと坂を上るように動き、これはやり過ぎたと自戒した途端にまた坂を滑り落ちて行きます。
農家さんで知り合いの方にちょっと尋ねてみるも「あはは・・・」と言うばかりで秘伝の技を伝授してはもらえず、未だに丘の幾何学模様に敬意を表するしかありません。近くではなく遥か彼方のポイントを決めて、それに向かっていくのだとかのヒントをもらうも、作業してみればその通りに行かない
のが現実。結局のところ作業の効率を極めるうえで平行に耕運することがベストなのは紛れもなく、ただプロフェッショナルな仕事の現れ、に尽きるのかなぁと妙に悟る始末。
この広大な大地を短い春のうちにテンポよく作業する農家さんですが、ここ数週間は夜討ち朝駆けを文字通り実践中です。早朝5時前から作業を始める丘もあり、お天気次第では夜9時過ぎても耕運機が丘をライトアップしていることも・・・。こうやって美瑛の丘、即ち畑は美しい畝や耕運機の跡を刻まれ、そして夏から秋に向けてほとばしる美味しさを詰め込んだ野菜が生まれます。
厳冬期、のんびりした優しい表情で「しばれるねぇー」とスーパーで言葉を交わす奥様達も、今はちょっぴり真剣なまなざしで畑と向き合っていらっしゃいます。

美しい丘の景色は、雪が積もりはじめる11月中旬ごろまでその移り変わりが楽しめます。と同時に素晴らしい丘の恵み(美瑛産の野菜たち)もこれからアスパラを先頭に次々と満喫できる予定です。丘の景色に魅せられて美瑛に来た自分は、相変わらず丘の美しさのとりこになっているのと同時に、野菜の大ファンにもなってしまいました・・・。

世界初・・・が相変わらず踊る「新車のキャッチフレーズ」。

5月8日に、最大手(今や世界で一番の)トヨタ自動車が決算を報告しました。トヨタ創家の章男社長が総会に立ち、業績報告後の質疑にも応じた模様がニュースに出ていました。このニュース関連の記事で一番目を引いたのが、トヨタは利益目標を数字で表現しない(利益目標値を出さない)こと。章男社長の説明によれば、利益はあくまでもついてくる結果で、利益を数字的な目標にしてしまったら、その数字が場合によっては本末転倒な独り歩きになるからだと言う。つまりはやるべきことをやる、ということが目標で、その結果利益がこうなった、という順番を間違えたくないと言うことなのだと思いました。
ちなみに100年以上続く会社の比率と言うのは随分少ないそうで(どのくらいかはすっかり忘れてしまいましたが)、200年以上の会社はヨーロッパと日本にそのほとんどがあって絶対数は圧倒的に日本に残っていると聞き及んだことがあります。長く続くことが「正義」だとは言えないけれども、短期間で消えたり生まれたりするのも疲れてしまう。トヨタが利益目標を封印しているのと対照的に、日産のゴーン社長は数字一辺倒という趣で興味深いです。日本の会社はどうしても家族経営的な雰囲気があって、僕個人はそこは長所だと捉えてしまいます。欧米(特にアメリカ)に行くと、そこに大きく株主の存在が絡むようで、日本とは随分違うと感じてしまいます。欧米で会社経営をしたこともまったくない僕が言うのもおこがましいわけですが、日本において会社は誰のものか、と問えば、社長(経営者、あるいは経営に携わる人たち)、社員、もう少し広く顧客という視点があると思うけれども、アメリカでは最優先で株主と言うことになると思う。株主はその時々の配当に敏感なので「今」こたえが欲しいのだろうなとは理解しますが、経営者となれば3年後・5年後のことを考えないわけには行かないですし、社員だって5年後・10年後に会社がなくなって自分の働く場所が消えてしまうことを心配しないわけには行かないですから、どうしても視点には差が生まれてしまいます。株主の株を保持する理由にもよると思いますが、株主が簡単に社長をチェンジしてしまうアメリカにおいて、利益目標(=配当目標)は欠かせず、短期間で結果が求められる傾向は変わらないことでしょう。トヨタが利益目標値を掲げない、なんてことは絶好調の裏返しであると同時に、80年間脈々と豊田家を軸に会社をつないできた実績から、20年後・50年後のことさえ意識しながらのことなのかなぁなんて妄想しています。


とまぁあまり得意じゃない会社経営のお話しは時のニュースと言うことで、日産のニュー・カー“スカイライン”について気になる事を記しておきます。昨秋(10月だったと記憶しています)新車の発表があって、来春に販売する大幅な先行発表で少々気が抜けた感は否めませんが、新スカイラインにはまたしても「世界初」が搭載されていました。
その代表格がステアリング・バイ・ワイヤという技術で、簡単に言えばハンドル切ると切り角が電気的な信号になって送信され、モーターがまわってタイヤの操舵が行われる、というものです。つまりはベアリングやギアでハンドルとタイヤが繋がっているわけじゃなくて、テレビのゲーム機の付属品のようなハンドルと言えなくもない。
この技術の利点については数多く(精度や耐久性、重量減、コスト減、メンテの容易さ・・・)あるのだろうと察すると同時に、不都合なこともいっぱいあるような気がします。大きくは2つ気になっていて、ひとつはトラブル時の安全性。もうひとつはハンドルを切る際のリニア感欠如です。安全性については一概に言えませんが、機械的な従来のハンドルであればいっきに破損して制御不能になる事はほとんどないと推察されます。大クラッシュで壊れない限りは、壊れて行く兆候がフィードバックされる。ですから、あれ、なんか調子が良くないぞ、と気になる過程が必ずあるように思うのです。でも、ステアリング・バイ・ワイヤになったらある時突如として壊れて、急にハンドルが効かなくなる事だってあり得ます。怖いな、と思ってしまう。
と同時にもうひとつどうしても気になる点が、リニア感がなくなっちゃうことです。へこんだところにタイヤが通ればショックがキックバックして来る従来のメカニカルなハンドルと違い、電線を通じて電気信号で一方通行で操舵しているわけですから(厳密には双方向になっている模様)、悪路通ってもハンドルは全然反応しない(それがいいって言う人もいるにはいるでしょうけど)。無理に切ったハンドルが重くて、うーん、大丈夫かな・・・と思っていたら急に軽くなり、同時に前輪がスライドしていた、というリニア感。これってチューニング次第だと思うけれども、少なくともドリフトと同時に軽くなる、なんてことをシビアにチューニングすることは難しいんじゃないでしょうか。まぁそれ以前にこの巨漢(ついに全長4800mm、車重1800kg)をドリフトさせようなんて思うドライバーがいるはずもなく(いるのかな)、僕の話はハンドルのリニア感に纏わる極論ではありますが・・・。
もうちょっと現実的なこと書くと、新品のタイヤに変えてもハンドルのフィーリングは変化なし、ということ。けっこう減って来たからハンドル握ってても感覚曖昧だし、タイヤ変えなくちゃいけないな、なんて判断もできません。

そんなわけで、スポーティーな高級車とも言うべきスカイラインが、ハイブリッドになり(たぶん全グレードとも)ステアリング・バイ・ワイヤになるのを見て、運転好きの保守層に支持されるスカイラインがどうしちゃったのかなぁと感じた次第。
それが果てはゴーン社長の数値主義、株主のすぐに配当欲しいに繋がると見るのは、あまりにも乱暴すぎるでしょうか・・・?世界初の新技術を盛り込んで育まれて来たのがスカイラインじゃないか、とおっしゃるなかれ、誰がどう見たってスカイラインは保守本流のクルマです。