2016年2月12日金曜日

会社って(職場って)、やっぱり従業員のモノなのだ!

NHKの「プロフェッショナル」という番組が好きです。毎回なんていうのか仕事バカみたいな人が出てくる。超一流の技術者、医師、スポーツ選手、料理人などなど、その道を極めた人たちの素顔に触れることができる。ある面すがすがしいほどに、愚直に几帳面に、そしてクソ真面目にその「道」に突き進む人を身近に感じることができます。

もうひとつ好きな番組が、テレビ東京の「カンブリア宮殿」。こちらは基本的に経営者が登場します。大企業のトップも取り上げられるけれども、知る人ぞ知る地方の優良企業の社長が紹介されると、目からうろこではないけれどもすごく感激してしまうことが多い。
先週が千葉県のパンのチェーン店「ピーターパン」で、今週(昨日)は静岡県の和洋菓子店「たこ満」だった。聞いたこともない会社だし、実はたいして期待もしないで見始めるのだけれども、番組の冒頭からぐいぐいと惹き込まれてしまう。パンとかお菓子は、ある面どこにでもある食べ物で、そこに個性や特別な価値を盛り込むことはそう簡単ではないと思う。仮に少々うまく行ったとしても、すぐにライバル店に真似られたり、消費者から飽きられてしまうことだって多い。
そんな言ってみればどこにでもある商材で、どこにも負けない経営を粛々と経営している社長さんの語りは、実に奥が深い。と同時にきわめて当たり前のことをちゃんとやっている、と感じる。当たり前のことって何だ?といつも思うわけだけれども、あらためて当たり前の難しいことにも気づかされる。

こういった一見ライバルひしめき合う商材でびくともしない経営を成し遂げている会社の経営者は、その当たり前がシンプルにバックボーンに息づいている。それは
・社員の幸せな暮らしがあって、はじめて会社が成り立つ。
・お客様が喜んでくれること、それだけでいい。
・できることを精一杯。
の3本柱のようなのだ。そこには利益追求や、先鋭的なコストダウンは影をひそめ、はたまたブランド形成さえ無縁と感じるような会社経営がある。もちろん徹底したコストダウンはやっているのだと思う。でも、それは最優先事項ではもちろんないし、目標設定された原価低減活動でもないのだろう。おそらくは丁寧に育てられた社員たちから自発的に(であるためにとても効果的に)なされる、当たり前のコストダウンなのだろう。
経営者の生い立ちとして、猛烈社員・若手やる気満々社長の躓きの後、はたと行きつく境地のようなものを感じる。昨日のたこ満の平松社長で言えば、社員6人のうち5人から退職届を出され、泣きながら家路について耳に入ったのは「おれがおれがの我を捨てて、おかげおかげの下で生きろ」というアドバイスだったと言う。

結局のところ利益は後からついてくるのだ。それは何とあのトヨタ大帝国の豊田社長でさえも言っていた。追及してむりやり出した利益など、長続きなんかしない。ブランドだって最初からブランドを築こうとやってみたってそんなものが簡単に手に入るわけでもない。ブランドなんてヘタすれば2世代、3世代かけて、気が付いたらできていた、というようなものなのかもしれない。やっぱりブランドも「後からついてくる」ものなのだろう。

あらためて優良経営者の説く「3本柱」に立ち返ってみると、そこには生き生きとしてポジティヴな思いが顔からあふれ出している社員の存在に気づかされる。社長は1人だけれども、数百人の社員が「やる気満々」になってくれた会社の総合力と「やる気なし」になってしまった会社の実力には、あまりにも桁違いの差が出てしまう。
そのことを社長自身が骨身にしみてわかっているから、社員の大切さ、ありがたさを片時も忘れることが無い。そんな会社の社員は、なんとか会社のために自分の出来る精一杯で貢献したい、そういう雰囲気が行きわたっている。

やっぱり会社は「社員のためのもの」なんだと思う。会社は社長かお客様か社員か、誰のためのもの?海外であればもうひとつ株主のため、と言うのもあるようだけど、社員が最初でそこから初めてサービスや製品がお客様に届き、その対価としての利益が会社に(社員とそして経営者に)帰ってくる。ましてや株主はその先じゃないか、と今では株を持っていない僕が言うのも説得力のない話です。

あ、そうそう、私も美瑛の小さな宿「四季」という吹けば飛ぶようなお宿の経営者なのでありました。この最後に書くのもお恥ずかしいお話しですが、おかげさまでこれ以上ない、という従業員に恵まれて、お泊り下さるお客様の笑顔に接することの喜びを、今日も享受しております。もうちょっと給料をあげてもバチはあたらないね。

2016年2月5日金曜日

試乗記です。

札幌の中島公園内にあるコンサートホール「Kitara」でライヴを満喫した翌日、せっかく札幌に来たからと言うのでかねてより興味のあったアウディのS1に試乗して来ました。アウディは旭川にもディラーがありますが、少数派の(?)S1は札幌にしかないので、この機会にぜひ!と思っていたんです。実は購入予定みたいなものは当面なくて(余裕もなくて)、純粋にアウディS1に興味がありました。
以前にも当館の愛車に関する記事を書いたことがありますが、クルマには思い入れ(偏ったこだわりでしょうか)がありまして、いいなぁと感じるクルマはたくさんあるわけじゃありませんが、けっこう興味が強い私。優先順位を整理してみると・・・
1_マニュアル・ミッション車希望(たぶんDSGあるいはDCTはOK)。
2_4ドア、または5ドアで(2ドアでもいいんだけど、やっぱり4ドアの方が!)。
3_運転していて楽しいクルマ。
4_北国(でもって雪国)北海道在住ですので、4輪駆動車がよろしいかと。
5_パワフルで、小ぶりなクルマ。
まぁこんな感じ。逆に比較的我慢できちゃうのは・・・
A_居住性と荷室の大きさ(お客様のトランクが載るかどうかは気になりますが)。
B_燃費(もちろんいいに越したことはありません)。
C_将来的な下取り価格(乗り切る主義ですので)。
D_オシャレ度(そんなにスタイルを気にしません。走り優先)。
まだまだ細かいところで列挙することもありますが、キリがないのでざっとこんなところです。こうして箇条書きにしてみると、S1はまさにストライク。超どうでもいいところでエンジン横置きってところが引っかかりますが、1~5にしっかり該当してくれていてしかもCとDもクリアと来てますから文句なし。あ、優先順位の最初に「安価な」ってのがもちろんありますが、それには該当しないですね、アウディ君。
最近のクルマと言えば、ほとんどAT車になってしまい、一番MT比率の高いスバルで9.6%(2015年)。一番低いニッサンだと0.3%(同)なんだって。全体で2%程度って言うから、もうMT車という時点で特殊(変わり者)ではありますが、アウディS1はMTの設定もある、ってんじゃなくてMTしかないってところが極めてレアなクルマだと思います。

さて、試乗記ですので乗って運転した際の感想を記しましょう・・・。あくまでも私個人の感想でありまして、仕事柄けっこういろんな車を運転する経験はありますが、もちろんクルマ評論家でも何でもありませんので、あくまで個人的な・・・試乗記です。

【エンジン】
2Lのターボ過給器付き。1650回転から最大トルクに達するとカタログにはありますが、2400回転くらいまではトルクは薄い感じ。でも、必要最小限のチカラは十分ある。2400回転から上は、とてもパワフル。アクセルのオン・オフ時のレスポンスも機敏で、印象良し。少し音が大きい。エンジン・ノートは意外と野太くて、この手の音を「サウンド」と思っている僕としては気になりませんが、早朝や深夜にアイドリングするには少しはばかられる音量ではありました。ちなみにアイドリング・ストップ機構付きです。
ロング・ストロークのトルクを意識した4気筒ですが、8,000までタコ・メーター切ってあって、その気にさせます。

【ミッション】
6速マニュアル・ミッションは、BMWと違ってカチッと節度あるシフトフィール。BMWより遥かに良くて、スバルさえ凌ぐかもしれない・・・。
あと、1速と2速が開き気味(なのでスタート後に1速使う機会がほとんどない)なのと、4速と5速も少し離れている感じがしました。トータルとしてはメカニカルにカチッと決まるミッションは気持ちよく、かなり長い区間を試乗したかぎりでも、ギアの守備範囲に不足を感じることはありませんでした。

【乗り心地&サスペンション】
一番サスセッティングが柔らか目になる「エコ」モードは試しませんでしたが、剛性感たっぷりのボディとサスペンションの伸び縮みがしっかりしていたので、いわゆる「乗り心地」は、クルマの性格上難しいだろうと懸念していましたが、全くの杞憂。若干固めながらもフランス車のようなじんわり路面を抑える感じは素晴らしかった!
試乗コースは、市街地からちょっとしたワインディング、さらには積雪路と多彩でしたが、どこへ行っても乗り心地がいいのと、雪道での安心感も白眉。めのホィール・ベースで雪の上のコーナリングは神経質かな?とちょっと気になっていましたが、すばらしいグリップで軽々と走り抜けて行きました。

【インパネ周り、運転席】
メーター類の視認性よし。ペダルレイアウト、シートのホールディングとも抜群です。しいていくつか気になったことを挙げれば、1つはシートとハンドル&ペダル類の位置(距離)。意外とクラッチが深くて、その分シートを前に持って来るとハンドルが近いこと。これはハンドルの位置決めができるそうなので、たぶん落ち着くポジションを決めることはできると思うけれども気にはなった。
そのほかには、ナビの画面が小さい。見にくい。あんまり見ないと思うけど、もうちょっと大きい方がいい。さらにはハンドル形状。6時の位置に潰しが入った変則楕円なんだけれども、据え切りに近いケースだと、そのつぶし部分がちょいと握り辛い。こんなの丸くていいのに、ヘンなところでデザイン入れてどうする?
とまぁ重箱の隅的な指摘が続きましたが、トータルで言ったら素晴らしいとしか言いようがない。インパネは実にシンプルで、華美さや派手さは皆無。ブラックの落ち着いたトーンでまとめられている。文句ありませんでした。

【総評です】
トランクがちっちゃい。これは以前(ちょうど2年前に)同型のアウディA1を見た時から知っていたことですが、やや大きめのスーツケース入れたら、もうほかには何も入らない。ふたりで旅行にでかけるなら、後部座席も荷物置き場として使うしかない。それでOKという割り切った使い方が前提になると思う。
で、順番から行ったらウチのBMW130ⅰの入れ替えと言うことになるけれども、当方のBMW、入れ替えたいと思うような決定的な不具合はほとんどない(と言うか、すっごく気に入っている!)。もし万一営業さんのラヴ・コールに負けて入れ替わっちゃうようなことがあるとすれば、冬場のBMWの走破性が理由(ほかには思いつかない!)。FRのBMWだと、冬は知らない道を走る勇気は起きない。とにかくスタックしてしまいやすいクルマなんです。それを補ってあまりある「駆け抜けるよろこび」があるんですけどね!
駆け抜けるよろこび的に、S1と比較してBMW130ⅰは?と言うと、ミッションの節度やノーズの若干の軽快さでS1に軍配。ただしエンジンフィールは、シルキー6のBMWには及びそうもない。BMWの3L6気筒のなまめかしさと言ったら、ちょっとほかには経験がない艶っぽさみたいな惹きがある。このエンジンに対抗できそうなフィールで思い出されるとしたら、かなり古いニッサンGTRの2.6Lかスバルの水平対向3Lの2本だけなんだけれども、どちらも過去のものになっちゃったし、燃費なんかはくらべものにならないくらい悪かった。BMWの3Lは、諸般のクルマ事情の荒波を乗り越えてなお生き続ける希少な優等生6気筒なのです。
無理やりウチのもう1台、スバル・インプレッサSTIと比べると、排気量や4WDでは同じ。走りの気持ち良さも似たようなものじゃないでしょうか。オシャレなアウディ対無骨なスバル。コンパクトできびきび走るアウディ対そこそこ荷物も入って300馬力オーバーの力持ちのスバル。少しだけ、アウディの方が物語があるけれども、スバルのクルマの成り立ちは、それはそれでスポーツカーのバック・グラウンドは十分。うーん、こうしてみると、むしろS1はインプレッサの好敵手なんだね・・・?