2018年4月20日金曜日

個人経営・・・を意識するあなたへ。

いまから11年前の4月、長年勤めていた会社を辞して、北海道美瑛町にやってきた。ここで個人経営者になる覚悟だった。行き当たりばったりでやっていたこともあるけれども、一応計画というものを立案していたことももちろんあった。

毎年4月になると、その当時のことを思い出す。そして、ああしておけば良かったな・・・と思い返すことも少なくない。そんなあれこれの個人的なこともあるけれども、できれば今、個人経営(またはそれに近いごく小規模経営)に踏み出そうと考えていらっしゃる方に、ちょっとだけ入れ知恵したい。ま、お役に立つかどうかは保証の限りでない(ほぼ役に立たないかもです)ので、そのつもりでお読みいただきたい。

やりたいことがあるのか、それとも今の暮らしから新天地を目指したいのか、その両方なのか、いろいろな理由はあると思うけど、最初に「こういうことをしてみたい」「こういうことが好き」は、外せないと知っておいてほしい。
現状脱出が最大理由で、何やるかは決まっていないし思いつかない、だとかなり厳しい。こういうことをやって、こういう暮らしをして、その結果自分のやっていることが少しでも人のためになる、お客様が喜んでくださる、につながるようにしたい。と、このシンプルなバックボーンは絶対に持っていて欲しい。もちろん、今の何か具体的なことにすごく嫌悪感を抱いていて、そこから別の環境に移行したい気持ちが強くある方もいらっしゃると思うが、何やりたいかが絞れないと今の二の舞になる可能性がある。

と同時に、やりたいことはあるけど、自分では無理とかあれは私のいる場所とは別世界の、私には手の届かないこと、と思ってはいけない(もちろんアイドルになるとか、野球選手になる、みたいなことは恵まれた容姿や才能が欠かせないので、無理もあるけど)。
自分がやってみたいことをやるのに、限界はないし遅すぎたってことも絶対ない。裏を返せばやりようは必ずある。もし「食っていくためには」と言う理由から、不本意ながら、仕方なくこれでやる・・・という選択は、継続することが難しい。はっきり言ってしまうと、個人経営なんて客観的に見たら今風にはブラックだ。余暇もなければほとんど休日もない。儲かるから(儲かりそうだから)ではもたない。「好き」ならやれる可能性があるけれども、「好きじゃない」のにやり続けることは苦痛でしかない。だから「好き」はなるべくたくさん味方につけておこう。
やりたいことが見つからないあなたは、静かにそっと自分の気持ちに正直に向き合うこと。これなら少々厳しい日が続いても、やっていける・・・。そう思える何かを、必ず見つけてください。間違っても起業セミナーとか、情報商材のお世話にならないこと。そんなとこ行っても、多かれ少なかれあなたの大切な資産をむしり取られるのがオチ。起業セミナーに行って、成功した人の話は聞かない。セミナー通り成功できるのなら、起業セミナーやっている人が起業すればいいし、すでに起業していて成功しているのなら、まず間違いなくセミナーやってる場合じゃない(そんな暇あるわけない)。セミナー主催者の起業は、セミナーそのものだということを知ってください。

で、私はこれで個人(またはごく小さな規模の)経営したい、となったら、2つのことを考えてください。1つ目はお金のこと。これはいろいろ情報収集のためにそれこそ金融に関するセミナーとかに出向くのも手だ。オススメはやろうと思っている地域の商工会に加入して、そこでアドバイスをもらうこと。まだ始める前で自信がないでしょうし、こっそり始めたいと思うのは誰しも同じかもしれませんが、そんな悠長なことを言ってる場合じゃないです。商工会の扉を開けて、大きな声で「よろしくお願いします」と言ってください。
2つ目は、どこか同業者の先輩(全く見ず知らずでもいいから)のところに転がり込んで、いろはの「い」を教えていただけないか探ってください。誰かの紹介とか、かえってない方がいいかもしれません。あなたは身一つで、無償で(多少の有償かもしれないですが)労働力を提供し(受ける側からすると、あまり役立つとは限らないです)、かわりにその世界の一端に触れる(あわよくばノウハウの一部を知る)という具合です。そんないい話があるのかい?と最初からあきらめてはいけません。ネット社会ですから一生懸命あなたを受け入れてくださる親方を見つけること。あなたには同じ仕事を始めようとする情熱があります。そして親方はどこかに自分自身の跡継ぎ・のれん分けに関して、前向きな方もたくさんいるはずです。
開業のためには、必要なお金を工面しなくてはいけません。と同時に、最低限の知識も必要です。それは本業と必ずしも関係のない知識かもしれませんが、先輩の胸を借りられたらそんな心強いことはありませんからね・・・!

さ、1歩踏み出せそうですか?これから山のような課題が降りかかってきます。営業して仕事を取ってくること、必要なサービスを提供するために人材集めること・・・。
と同時にまだ見ぬ世界には、果て無い可能性も広がっています。

2018年4月10日火曜日

開業する友人にエールを送る。

去る4月1日、美瑛でほぼ同期に宿屋を開業したE君のお誘いで、彼がこの6月にもオープンするカフェの、開業前のリハーサルにお邪魔してきた。なんでもリハーサルだから、友人・知人も誘って来てくれという。飲食代は不要というので(さすがE君!)、スタッフ中心のメンバーで押し掛けた。

まだ開業前のカフェは何もかもが新しいわけだけれども、「カントリー」を基調にしたそのお店は、真新しいながらも人の居心地を良くさせるための、まさにカントリー的なしつらえが素晴らしかった。さすが彼のセンスはいいなぁと感心した。
それでもまだ実際に始まっていないカフェに行けば(ランチタイムに、ざっと50人ほどは客(テストのための)がいたと思う)、あれこれ感じることがある。接客のやり方や、メニューの展開といったアプローチの部分と、トイレがどうだとかテーブルのレイアウトがこうだとかいうカタチの部分の大きくは2つに大別された課題があれこれと思い浮かぶ。

それにしても人様のやることというのは、いいこともそうだけど今一つなところも実によく気が付くものだ。ちょっと流れている音楽がなぁ・・・とか、自分のやっている宿のことは棚上げで、思いつくことは多い。E君からの希望で「ぜひ、気の付いたことを列挙してくれ」というので100行ほどのメモを翌日渡した。

それにしても、宿屋をやりながらカフェも切り盛りするなんて、本当にE君は経営のセンスも実力もあるもんだと感心する。開業ということで、経済企画庁の中小企業白書という資料を見たら、開業のしやすさ・廃業になりやすさを表したグラフ(イメージ図にもなっている)があった。それを見ると宿泊と飲食はカテゴリーの中ではもっとも開業しやすくて(表からはおおむね9.6%くらいに見える)、同時に最も廃業に至りやすい(同じく6.5%くらい)業種ということになる。


ちょっとここに割り込みたいと思って持論を勝手に記してみるけれども、宿泊と飲食を一緒にするのは、無理があると思う。飲食と宿泊業には少し決定的な違いがあって、何と言っても初期投資の大きさが桁違い(1桁だけど)だ。最近は民泊もあるからその差は縮まっているかもしれないが、普通に宿屋をやろうと思えば(朝晩の食事も供する)、お部屋、お風呂、寝具・家具(ベッドだったりソファーだったり)といった建物&客室(と、その調度品)が必要になるので、ここへの設備投資は数千万円(たぶん億に近い)にはならざるを得ない。飲食店となればもしかすると自宅の一部(多くかな?)を改装して、1千万円に満たない額(場合によったら数百万円)で、オープンできる場合もある。
だから、カフェには競合がいっぱいいるし、ちょっと流行ればマネもされる。カフェで10年間ずっと人気店なんて、なかなかできないことだと思う(ごくたまにはあるけれども)。ところが宿屋さん(僕ら程度のこじんまりした5室前後の客室の)は、平気で10年くらい人気の宿はある。E君の宿は、まさにそう。でもって簡単にはマネされない(できない)。

ということでさっきのグラフに戻れば、カフェはさらに開業しやすく、廃業してしまう可能性も高いだろうと思われるし、宿は開業のハードルはもっと高い代わりに、はじめればカフェほどライバル多い世界に晒されることはないから、もうちょっと廃業の率も低いと思う。

で、この私のブログなんかを読んでくださっている方の中には、ご自身もいつかは北海道で(あるいは海外かも?)カフェをしてみたい、とか、小さな宿屋さんをやってみたい、とお考えの方もいるやもしれません。そんな読者の方に、カフェと宿屋のそれぞれの特徴を知っておいていただけるといいなと思いました。
もう少し続けると、カフェ(飲食店)ではお客様一人当たりの売り上げは、1,000円前後から高級店となれば5,000円くらいまで(いやもっとかな)になります(そもそも、いきなり1食5,000円取れるお店を出すのはかなり難しい)が、宿屋ではもっと高いですよね。しかもお一人でいらっしゃるケースは少ない。
さらにはカフェや飲食店では予約でいらっしゃるお客様は少ない(中には予約だけ、というお店もごくごくわずかありますが)。一方宿屋はほぼ全数が予約です。これは一長一短で、予約が先々まで埋まっちゃって身動き取れなくなることもあるけれども(休もうかな、なんて気楽にできない)、予約で動くからいろんなことは計画が立てられる側面もある。

とまぁ切りなくあるわけですが(もっとお知りになりたい方には、いくらでもお話しします)、かってのように就職したら定年まで、が容易ではなくなったいま、ご自身で何らかの起業を考えている方もいらっしゃると思う。4月、新しい年度に皆さんはどんなことを胸に臨みますか?すべての人に、希望溢れる新年度だといいですね。僕ですか、はい、持ちきれないほどの希望を、欲張っていますよ♪